ご挨拶

理事長 平田 公一
(札幌医科大学第一外科)


 平成21年度からの理事長(3代目)として就任させていただきました。宜しくお願いいたします。

 日本静脈経腸栄養学会は長年に渡って、臨床栄養の発展と国民への良質な医療提供のために貢献して参りました。会員の皆様が、チーム医療体制の確立による治療成績の向上を願い誠意をもって臨床の実践と臨床的・基礎的研究を継続し、組織としてそれらの検証を繰り返した結果、今日の繁栄ある学会へと発展したものと確信します。一方、グローバル化社会にともなう本邦の各種制度・機構の改革や国民の意識と要求の変化を背景に、昨今の医療制度にも改変を生じ、その中で医療従事者を囲む医療環境については厳しすぎるものがみられます。ここであらためて国民医療の在り方とわれわれの関わり方についてその在り方を探り、学術団体としては「貢献」と「主張」の両面からしっかりとした姿勢を示していく必要があると存じます。今日までに多くの方々の努力によって、本会の学会組織は社会に提言していく組織として整備されるべきものがあります。一層の発展的整備を進めたいと存じます。また、時代の不規則な風に対し動じることなく、学問を追及しようとする姿勢を貫いていくことも大切です。私は小越章平初代理事長、大柳治正前理事長の築かれてきた体制を引き継ぎ、学術的交流の国際化、日本の臨床栄養学の社会的貢献体制の構築、患者さんの視点に立つ学術団体としての成育、などを目指します。この基本理念を、皆様とともにしっかりと継承させていただきたいと存じておりますとともに、近未来医療の一層の充実化を図る新展開に力を注がせていただきます。以下に私の考えの概要を項目別に述べさせていただきます。

(1) 社会が求めている臨床栄養供与制度の充実化と医療体制への有効的導入
 本学会が関わってきた各専門領域別の認定については厳格な制度の下で実施されてきましたが、なお社会的な評価が充分ではないのが実情です。医療制度への導入とその実践の中から検証を加え、その内容を向上させることを基本とし、とくに医師レベルの底上げを行ないまた専門的資格取得者が報われる将来を見据えた制度改革に尽力したいと考えます。

(2) 患者を中核に設けたNST活動の一層の充実を目指して
 信頼と安心を与えることのできるNST活動には、そこに関わる医療従事者が人間哲学を意識し、それを基礎としたNST活動上での向上心を常に加味しての実践が必須条件となります。
 さらにその実践を保障するための支持根拠となる、適正な保険診療報酬制度の確立も要求しなければなりません。そのためには、各種関連団体との密接な連携を計画したく考えています。

(3) 医療従事者の就業環境の改善を目指して
 医療従事者の高度な専門性と実践内容に対する責任要求は年々増しており、並行して個人の就業環境(業務の完遂と就業時間に関すること等)に大きな負担が生じつつあります。待遇や責任への保障、関連する法的整備など不十分な状況にあることは否めません。早急な就業環境に関する指針の策定や社会への働きかけが必要と考えています。

(4) 充実した医療体制を構築するにあたってのエビデンス創成を目指して
 臨床栄養に関する診療報酬内容にようやく改善傾向がみられますが、相対的にはなお不均衡配分の存在は否めません。その改正のためにはいくつかのエビデンスが要求され、学術集会に向けて客観的なエビデンス創成のできる研究計画の構築を会員に期待していただきたいと考えます。

(5) 学術集会の内容について
 より計画性・継続性のある学術集会のプログラム作りとともに、静脈経腸栄養管理システムの内容向上と高リスク症例に対する高度の安全医療を提供するためのリサーチプログラムなど、本学会ならではの学術集会構築が必要です。その運営にあたっては、プログラム内容の充実化を主眼におくべきとの指摘を受けてきた歴史的経緯を真摯に受けとめ、慎重にそのことを考えて参ります。

(6) 日本静脈経腸栄養学会の新たな展開について
上記の課題を中心に討論を計画し、課題の抽出とその解決を図るとともに、関連学会との住み分けや連携などを整理し、会員へご一考いただくための情報提供を行なうなどのことにより良好な方向への探索を進めていきたいと存じます。国民の医療に有用で解り易い提言を発信するためにも、他組織と協調し、整備された連携体制を構築する必要があります。そのことへ本学会が一層のリーダーシップを発揮していくことが重要で、そのための貢献をしたいと思います。

 以上の実現のためには、何といっても会員個々の質の向上が期待されます。また、学術団体としての法人化、利益相反ポリシーの在り方、学術誌の英文化、関連学会との交流・役員派遣、などが近未来的課題ともなりうると考えております。
 これまでに公私に渡って賜って参りました知識と多くの関連学会での経験を生かし、会員の皆様のご支援と役員の皆様のご協力をいただき、理事長として日本静脈経腸栄養学会の発展のために尽力いたす所存です。何卒宜しくお願いいたします。